単焦点レンズなのに、PCも見やすい?〜テクニスアイハンス

眼内レンズ

〜テクニスアイハンスで広がる、保険の範囲内で「ちょうどいい視界」

テクニスアイハンス(Tecnis Eyhance)の特徴とは ―

白内障手術では、混濁した水晶体を取り除いたあとに「眼内レンズ」を挿入します。

これまで主に使われてきた単焦点レンズは、一定の距離にピントが合うシンプルな設計でした。そのため、たとえば「遠くがよく見える」ように合わせた場合、近くを見るには眼鏡が必要でした。

しかし、テクニスアイハンスは、単焦点であり、保険診療で使用可能ながらも、中間距離の見え方が少し改善されるという特徴を持っています。


【テクニスアイハンスの特徴】

項目特徴
種類単焦点眼内レンズ
焦点距離遠方〜中間距離まで見やすい
見え方の特長少し「ピントの幅」が広く、PCや室内の距離が見やすい
ハロー・グレア通常の単焦点と同様、ほとんど気にならない
コントラスト感度従来の単焦点IOLと比較して有意差なし
適応網膜疾患や緑内障などで多焦点が使えない方にも使用できる可能性あり
製造会社Johnson & Johnson Vision(米国)

中間距離も少し楽に。生活の中でどう違う?

従来の単焦点レンズでは、遠くはよく見えても、スマートフォンやパソコン、食事のときの手元は眼鏡が必要でした。

テクニスアイハンスでは、遠くを主体にしつつも、「80〜100cmくらいの距離」も比較的見やすいという設計になっています。

たとえば、

  • リビングでテレビを見ながら会話する
  • デスクでPC作業をする
  • 鏡で顔を見る

といった、日常の中間距離での見やすさが向上します。

↑アイハンスでは、1mから50cmの距離が単焦点眼内レンズより見やすいです。


医師の私見:安心して使えるが、「多焦点ではない」ことを丁寧に説明したい

私自身もこのレンズを多くの患者さんに使用してきましたが、「悪いことがほとんどない」という意味では非常に扱いやすいレンズです。

アイハンスはコントラスト感度が高いことで、網膜疾患や緑内障で視野が欠けている患者さんでも検討できます。

コントラスト感度については、単焦点眼内レンズと比較して有意差なしという論文が多数ですが、少しだけ単焦点眼内レンズよりコントラスト感度が劣る可能性を指摘している先生もおられ、過度の期待には注意が必要です。

また、あくまで私自身の臨床経験の範囲ではありますが、黄斑上膜など網膜に病変がある方においては、白内障単独手術の方と比べて、中間距離の見やすさの改善度が控えめに感じられることがあります(※正式なデータではなく、個人の臨床感覚に基づくものです)。

そのため、術前説明では「多焦点のような劇的な変化を求めるレンズではないが、より自然で快適な日常をサポートする設計」のレンズと捉えていただけると良いかなと思います。


まとめ

  • テクニスアイハンスは、多焦点ではないが中間距離が少し見やすくなる単焦点レンズ
  • ハロー・グレアが少なく、見え方が自然
  • 多焦点が使えない方にも、少し眼鏡を減らしたい方にもおすすめ
  • ただし、明視域の拡大効果は個人差があり、網膜疾患併存症例では限定的な印象もあり

「中間まで見えて便利」と感じる方もいますが、手元までは見えないのでそのメリットをあまり実感されない方も多いです。一方で、見え方にトラブルが少なく、かつ生活の質を少しでも上げる可能性があるレンズとして、白内障以外に眼疾患のない方だけでなく、多焦点眼内レンズが適応外の方にも検討できる有用な選択肢の一つだと思います。

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