白内障手術では、水晶体の代わりに「眼内レンズ」を挿入します。このレンズ、実はあとから「入れ替える」ことも可能です。ただし、その場合は「初回の手術と同じ」とは言えません。
入れ替えは可能です。ただし…
一度手術を受けた目の中は、手術前とまったく同じ状態ではありません。レンズを支える「水晶体嚢」や「チン小帯」といった組織には、前回の手術の影響が残ります。
眼内レンズは水晶体嚢と癒着しますので、入れ替えるにはその癒着を丁寧に剥がす必要があります。これは慎重な操作が必要で、癒着の状態によっては手術の難易度が上がります。
タイミングが大切です
入れ替えは数ヶ月経っていても可能ではありますが、より安全に行うには「1ヶ月以内」が理想です。できれば「3ヶ月以内」であれば合併症のリスクも比較的低く抑えられます。もちろん、それを過ぎていても対応できますが、だんだんとリスクが上がってきます。レンズの種類や目の状態によっても違います。
考えられるリスクについて
- 癒着や組織の変化
初回手術後、眼内の組織は変化しています。再手術では、癒着を剥がすなどしながら眼内レンズを良い位置に挿入する必要があります。この解剖学的変化によりリスクが増します。
- 炎症リスク
再手術は組織に追加の負担がかかるため、炎症が起きやすくなります。術後の炎症が強くなると、黄斑浮腫(網膜のむくみで視力が低下する)や続発緑内障(眼圧が上がる)の原因になることもあります。
- 高機能レンズの制限
眼内の状態が変化しているため、多焦点レンズやEDOFなどの性能が十分に発揮されないことも。場合によっては使用が難しく、単焦点レンズへの変更しかできないケースもあります。
一番大切なのは「初回手術での納得」
眼内レンズは、基本的には「一生使うもの」です。だからこそ、初回手術の段階で、じっくりと相談し、自分に合ったレンズを納得して選ぶことが何より大切です。
そして、もし入れ替えを検討したいと思ったときは、信頼できるクリニックで、医師やスタッフとしっかり話し合ってください。
👁 入れ替え手術は「できる」けれど、大切なのはその“意味”
入れ替え手術は、技術的にはどのようなケースでも可能です。だからこそ、私は「やろうと思えばできる」という選択肢は常に持っています。
ですが大切なのは、“本当にその入れ替えによって望む見え方が得られるのか?”ということです。
入れ替えることでかえってリスクが高まることもあり、得られるメリットが小さいケースもあります。
私としては、できるだけ患者さんの思いに寄り添いながら、その時の目の状態やご希望に応じて、最善の選択を一緒に考えていきたいと思っています。
もちろん、入れ替えることで明確なメリットがあると判断できれば、責任をもってしっかりと対応させていただきます。
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