40代になって、ふと気づく見えにくさ。
スマホの画面が近すぎるとぼやけて、思わず腕を伸ばしてしまう。
夕方になると、書類やスマホの文字が読みにくくて目が疲れる。
それ、もしかしたら「老眼」の始まりかもしれません。
■老眼=「老視」とは?
医学的には「老視(ろうし/presbyopia)」と呼ばれます。
年齢とともに目のピント調整力が低下し、近くを見るための焦点が合いにくくなる状態です。
人の目は、カメラでいう「オートフォーカス機能」が備わっています。目の中で、「毛様体筋(もうようたいきん)」と「水晶体(レンズ)」がこの「オートフォーカス機能」を担っています。
近くを見るときには、毛様体筋が収縮し、水晶体の厚みを厚くすることでピントを合わせます。
年齢とともに、
- 水晶体が加齢で硬くなる
- 毛様体筋の動きが弱くなる
という2つの要因が重なり、調節力は徐々に落ちていきます。
■年齢とともに落ちていく「調節力」
老眼が始まる背景には、「調節力の低下」があります。
以下の図は、年齢と調節力の関係を表したものです。

図. 年齢と調節力(D)の関係。40代から急激に低下し、60代では老眼鏡がほぼ必須に。
■調節力の変化と年齢の関係
調節力は10歳代をピークに、20代後半から緩やかに低下し始め、
40代に入ると急激に落ちていきます。
年齢 | 調節力(D:ジオプトリー) | ピントが合う距離の目安 | 老眼鏡の必要度 |
10歳 | 約14D | 約7cmまで見える | 不要 |
20歳 | 約10D | 約10cmまで見える | 不要 |
30歳 | 約7D | 約14cmまで見える | 不要 |
40歳 | 約4〜5D | 約25cmが限界 | 近くの作業が多い人は必要になることも |
50歳 | 約2D | 約50cmより近くはぼやける | 日常生活に支障が出始め、多くの人が必要に |
60歳 | 約1D以下 | 近くにほぼピントが合わない | 老眼鏡ほぼ必須 |
70歳以降 | 0.5D以下(実質ゼロ) | 自力でピント調節は困難 | 老眼鏡必須 |
■D(ディオプトリー)とは?
D(ディオプトリー)は、「ピントを合わせられる距離(焦点距離)」の逆数で表される単位です。
D = 1/焦点距離(メートル)
たとえば:
- 焦点距離が 0.25m(25cm) なら
D = 1/0.25 = 4D
- 焦点距離が 0.5m(50cm) なら
D = 1/0.5 = 2D
このように、Dの数値が大きいほど、近くにピントが合う力があることを意味します。
■老眼の症状はさまざまです
- スマホや本を遠ざけて読むようになった
- 夕方や暗い場所で読書がつらい
- メガネを外した方が近くが見やすい(近視の方)
- 目の奥が重い、頭が痛い、肩がこる
- 遠近のピントの切り替えに時間がかかる
このような症状は、「疲れ目」や「加齢」のせいと見過ごされがちですが、
適切な対処をすることで、見え方のストレスは大きく改善できます。
■老眼は老化現象の一つだけれど…
「老眼って、もう年なんだな…」とがっかりされる方もいますが、
老眼は誰にでも訪れる目の生理的変化です。
老眼への対策の基本
- 遠視・正視の人(これまで遠くが裸眼で見えていた人)にはメガネ処方
- 近視の人にはメガネやコンタクト度数の見直し
が基本です。
次に
- 老眼用コンタクトレンズ(遠近両用ソフトコンタクトレンズ)
の検討
そして選ぶかどうかは人によりますが、
- 遠近両用眼内コンタクトレンズ
- ライフスタイルに合わせた多焦点眼内レンズ(白内障手術)
があります。
(※手術については次回の投稿で詳しくお話しします)
■私も老眼を実感し始めています
私は30センチくらいが裸眼で見えるくらいの度数の近視です。普段はコンタクトをつけて遠くにピントを合わせています。
ついに最近夕方スマホが見えにくい!と感じるようになりました。外来には、同年代の患者さんが最近見えにくいと言って日々来院されます。
そんな患者さんたちに「わかるー」と共感しつつ、仕事に家庭に忙しい中年期を、より快適に楽しむために、このブログでは今後も、
- メガネやコンタクトの選び方
- 手術や最新の治療法
- 医師として、また一人の40代女性としての視点
を交えて、「目の見え方」から未来の楽しみ方を広げる情報を発信していきます。
次回は、実際にどんな対処法があるのか、特に「手術という選択肢」についても少しずつお話ししていきますね。
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