強度近視の白内障手術で多焦点レンズは使える?対応レンズまとめ

多焦点眼内レンズ



「強度近視だから、多焦点レンズは使えません」と言われたことがありますか

白内障の手術相談でこういったお話を聞くことがあります。

確かに、強度近視の方が白内障手術を受ける場合、

多焦点レンズの選択肢は限られることがあります。

まず確認しておきたいのは、PureSeeやPanOptixなど選定療養で使えるレンズも、

低度数のラインナップとして+6D程度から製造されています。

必要な度数がそのラインナップに収まるなら、選定療養レンズが選択肢になります。

この記事でご紹介するのは、それよりさらに強度の近視——

選定療養レンズでもカバーしきれない度数域が必要な方への情報です。

ただ、「そのような場合でも選択肢がまったくない」かというと、そうではありません。

対応できるレンズの選択肢が、少しずつ広がってきています。


なぜ強度近視では使えるレンズが限られるのか

眼内レンズには、製造できる度数の範囲があります。

強度近視の方が白内障手術を受ける場合、

必要な眼内レンズの度数が通常より低く(マイナスの大きい値に)なることがあります。

多くの多焦点レンズ・EDOFレンズは、+6D〜+34D程度の範囲で製造されており、

それより低い度数が必要なケースには対応していません。

「強度近視だから多焦点は使えない」と言われる場合、

この「度数範囲の壁」が理由になっていることがほとんどです。


対応できる可能性があるレンズ

現時点で強度近視でも使用を検討できる可能性があるレンズとして、以下が挙げられます。

レンズ名種類特徴
Acriva Trinova正弦波型三焦点強度近視対応の数少ない三焦点レンズ。
Mini WELL READY非回折型EDOF球面収差を利用した設計のEDOF。
Evolve Toric屈折型EDOF(オーダーメイド)度数・乱視をオーダーメイドで製造。度数範囲の制限が最小限。

※日本ではいずれも自由診療です。

※度数範囲の詳細はメーカー・取り扱い施設にご確認ください。


各レンズの特徴

Acriva Trinova(VSY Biotechnology・オランダ)

Acriva Trinovaは、正弦波(サインカーブ)型の回折設計を採用した三焦点レンズです。

通常の回折型三焦点レンズとは異なり、段差のない滑らかなゾーン設計により、

光の損失を抑えてコントラスト感度を維持することを目指した設計になっています。

遠方・中間・近方の三距離をカバーするため、

メガネへの依存度を大きく減らせる可能性があります。

ただし三焦点レンズの特性として、ハロー・グレアがある程度出ます。

→ Acriva Trinovaの詳しい説明はこちら:

Mini WELL READY(SIFI・イタリア)

Mini WELL READYは、回折構造を使わないEDOFレンズです。

レンズの光学部を3つの同心円ゾーンに分け、

それぞれ異なる球面収差を持たせることで焦点域を伸ばす設計になっています。

遠方から中間距離をカバーし、回折型と比べてハロー・グレアが少ない傾向があるとされています。

手元(40cm前後)はメガネが必要な場面が出てくることがあります。

→ Mini WELLの詳しい説明はこちら:

Evolve Toric(Soleko・イタリア)

Evolve Toricは、屈折型EDOFレンズで、乱視の度数をオーダーメイドで設定して製造される点が特徴です。

-5.00Dから+35.00Dまで対応しており、

他のレンズではカバーできない度数のケースにも対応できる可能性があります。

また乱視矯正タイプでは、乱視度数を0.25D刻みで細かく設定できます。

EDOFレンズとして遠方から中間距離をカバーし、手元はメガネが必要な場面があります。

→ Evolveの詳しい説明はこちら:


共通して知っておいてほしいこと:強度近視での注意点

度数計算の精度について

強度近視の方の白内障手術では、

眼内レンズの度数計算の精度が落ちやすいという課題があります。

眼軸が長い目では、計算式の誤差が大きくなりやすく、

術後の屈折値が目標から外れるリスクが通常より高くなります。

これはどのレンズを選んでも共通する課題であり、

Acriva Trinova・Mini WELL READY・Evolveのいずれを使っても変わりません。

そのため、術前の十分な説明と期待値の調整が特に重要です。

また、強度近視の手術経験が豊富な施設での手術が特に大切になります。

合併症リスクと適応判断について

強度近視の目では、白内障以外の目の問題を合併していることが少なくありません。

網膜が薄くなっていたり変性があったりなどの網膜の病気や緑内障を合併しているケースも多いです。

こうした合併症がある場合、多焦点レンズが適応できるかどうかは、

単に度数が対応しているかどうかとは別に、慎重な判断が必要になります。

コントラスト感度の低下が問題になる病態があれば、回折型多焦点レンズは避ける必要があり、

網膜疾患や緑内障の状態によっては、単焦点レンズの方が適切な場合もあります。

「強度近視でも使えるレンズがある」という情報は正しいですが、

「強度近視なら誰でも多焦点レンズが使える」ということではありません。

目の状態を総合的に判断した上で、適応を考える必要があります。


よくある質問(FAQ)

Q. 強度近視でも多焦点レンズを使いたいと思っています。まず何をすればいいですか?

まずは詳しい検査を受け、必要な眼内レンズの度数を確認することが第一歩です。その上で、その度数に対応できるレンズがあるかどうかを担当医と相談することになります。

Q. これらのレンズは保険で受けられますか?

いずれも日本では自由診療のレンズです。費用については受診先にお問い合わせください。


医師としての見解

以前は、強度近視の方に多焦点レンズやEDOFレンズを提案できる場面が非常に限られていました。

今は対応できるレンズの選択肢が少しずつ増えてきており、

こうした方にも「手元を見たい」「メガネへの依存を減らしたい」という希望を

一緒に考えられるようになってきたと感じています。

ただし、強度近視での度数計算の精度の問題は残ります。

術後の見え方が目標通りにならない可能性について、

十分に理解していただいた上で進めることが前提です。

選択肢が増えることは良いことですが、

「どのレンズが自分に合うか」は、目の状態と生活スタイルを合わせて考える必要があります。


おわりに

「強度近視だから、多焦点レンズは使えない」とあきらめていた方も、

一度相談してみる価値があるかもしれません。

ただし、どのレンズが適しているかは目の状態によって大きく異なります。

詳しい検査と診察の中で、一緒に考えていきましょう。



※本記事は一般的な情報提供を目的としています。各レンズの適応・価格・取り扱い状況は施設によって異なります。必ず眼科専門医による診察のもとでご判断ください。

※本記事で紹介したレンズはいずれも日本では自由診療です。

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