ICLとIPCL、何が違う?新しい有水晶体眼内レンズの選択肢

ICL

🍀近視矯正の選択肢が、少し広がった

「ICLを調べていたら、IPCLというレンズも出てきた。何が違うの?」

そういう疑問を持つ方が、少しずつ増えてきている印象があります。

2025年4月、IPCL(アイピーシーエル)が日本でも厚生労働省の承認を取得しました。

これまで日本で承認されていた後房型の近視矯正用有水晶体眼内レンズは、事実上ICLひとつでした。

それが、正式な選択肢として2種類になった。

患者さんにとっては「どちらが良いのか」という新しい疑問が生まれるタイミングでもあります。

この記事では、ICLとIPCLの違いをデータ・承認状況・適応の観点から整理します。

どちらを選ぶべきかを断定するものではありませんが、

判断の材料として役立てていただければと思います。


📖まず、有水晶体眼内レンズとは何か

ICLもIPCLも、どちらも「有水晶体眼内レンズ(phakic IOL)」と呼ばれる種類のレンズです。

「有水晶体」とは、自分の水晶体を残したまま、

虹彩(茶目)と水晶体のあいだにレンズを挿入するという意味です。

レーシックが角膜を削るのに対し、

有水晶体眼内レンズは角膜を削らない。

強度近視や乱視にも対応でき、

必要があればレンズを取り出すことも可能です。

そのような特性から、

近視矯正手術の選択肢として広く使われるようになってきた手術です。


💡ICL(EVO ICL)とは

ICLは、STAAR Surgical社が製造する有水晶体眼内レンズです。

正式名称は「Implantable Collamer Lens」、素材名でもある「コラマー(Collamer)」が特徴的です。

コラマーはHEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)とコラーゲンの共重合体で作られており、

眼内での異物反応が起きにくい素材として知られています。

日本では2010年に厚生労働省の承認を取得。

以来、国内でも多くの症例実績が積み重ねられてきました。

現在使用されているのは「EVO ICL」と呼ばれるモデルで、

レンズ中央に小さな孔(ホール)があり、

房水の循環を保つ構造になっています。

項目内容
メーカーSTAAR Surgical(スイス)
素材コラマー(HEMA+コラーゲン共重合体)
日本での承認2010年(厚生労働省)
世界累計症例数300万眼以上(2024年時点)
近視度数範囲−0.5D〜−18.0D(EVO)/−0.5D〜−14.0D(EVO+)
乱視対応+1.0D〜+4.0D(トーリックモデル)
レンズサイズ4サイズ(12.1mm〜13.7mm)

✏️IPCL(V2.0)とは

IPCLは、インドのEyeOL社(現Care Group)が製造する後房型の有水晶体眼内レンズです。

2014年に発売され、2017年にはヨーロッパでCEマークを取得。

日本では2025年4月に厚生労働省の承認を取得しました。

素材はハイブリッド親水性アクリルと呼ばれるもので、

動物由来成分を含まない点がICLとの違いのひとつです。

世界では40カ国以上で使用実績があり、13万眼以上の症例が報告されています。

項目内容
メーカーCare Group(旧EyeOL)(インド)
素材ハイブリッド親水性アクリル(動物由来成分なし)
日本での承認2025年4月(厚生労働省)
世界累計症例数130,000眼以上(40カ国以上)
近視度数範囲−30.0D〜+15.0D(近視から遠視まで)
乱視対応+0.5D〜+10.0D
レンズサイズ13サイズ(11.0mm〜14.0mm、0.25mm刻み)
老視(老眼)対応モデルあり(ただし日本未承認)

ICLとIPCLの比較表

両レンズの主な違いを一覧で整理します。

比較項目ICL(EVO ICL)IPCL(V2.0)
メーカーSTAAR Surgical(スイス)Care Group(インド)
素材コラマー(HEMA+コラーゲン共重合体)ハイブリッド親水性アクリル(動物由来成分なし)
レンズの厚さ標準ICLより薄い設計
日本での承認2010年〜2025年4月〜
世界累計症例数300万眼以上13〜20万眼以上
近視度数範囲−18.0Dまで−30.0Dまで
遠視への対応なし(近視・乱視のみ)あり(+15.0Dまで)
乱視矯正範囲+4.0Dまで+10.0Dまで
レンズサイズ展開4サイズ13サイズ(0.25mm刻み)
老眼対応モデルなしあり(多焦点タイプ・ただし日本未承認)
切開サイズ3.5mm以下2.8mm
前房深度の条件3.0mm以上3.0mm以上
年齢適応(推奨)21〜45歳前後21〜45歳前後(老眼対応は40歳以上も)

⚠️安全性と合併症リスクについて

どちらのレンズも、

術後の主なリスクとして知られているのは以下のようなものです。

  • 手術直後の一時的なかすみ・充血
  • グレア・ハロー(光のにじみ)
  • 眼圧上昇
  • 角膜内皮細胞の減少
  • レンズのサイズや位置の不適合(まれに再手術が必要)
  • 非常にまれなケースとして術後眼内炎

これらは程度の差はあれ、どちらのレンズにも共通するリスクです。

ICLは300万眼以上の長期データが蓄積されており、

安全性に関するエビデンスの厚さという点では、現時点でICLに分があります。

IPCLは日本での承認が2025年と新しく、

国内における長期成績のデータは今後積み重ねられていく段階にあります。


🌸ICLとIPCL、どう違うのか

率直に言うと、

現時点では「どちらが優れている」と断言できるほどの差はありません。

ICLは30年以上の実績を持ち、

世界中で300万眼以上という圧倒的な症例データがあります。

IPCLは2025年に日本承認を取得したばかりで、

国内での実績はこれから積み重ねられていく段階です。

スペック上の違いとして、

IPCLは乱視矯正範囲が広く、近視の度数幅も大きく、サイズ展開が細かい。

ただしこれらは、ごく一部の特殊なケースを除いて、

日常的な近視矯正の場面で大きな差として現れるものではありません。

現時点で両者を比べるとすれば、

「実績・症例数」か「価格」か、あるいは「素材の違い」といった観点が

現実的な選択の軸になってくることが多いと思います。

どちらが自分に合っているかは、担当医とよく相談の上で決めることが大切です。


📝よくある質問(FAQ)

Q. ICLとIPCLは、手術の方法は同じですか?

基本的な術式(角膜縁に小切開を作り、レンズを虹彩と水晶体のあいだに挿入する)は同じです。切開幅はIPCLが2.8mmと、ICLの3.5mm以下よりわずかに小さくなっています。

Q. どちらのレンズも、後で取り出せますか?

はい、どちらも取り出し可能です。将来的に白内障が進行した場合も、レンズを摘出して白内障手術に移行できます。

Q. IPCLは乱視が強い人に向いていますか?

乱視矯正範囲という意味では、IPCLのほうが広く対応しています。ただし、術者の経験・クリニックの設備・個々の眼の状態などを含めた総合的な判断が必要です。

Q. 動物由来成分が気になる場合は?

コラマー素材はコラーゲンを含む共重合体で作られています。動物由来成分が気になる方には、ハイブリッド親水性アクリル素材のIPCLが選択肢になる場合があります。担当医にご相談ください。

Q. IPCLに老眼対応モデルがあると聞きましたが?

多焦点タイプのIPCLは存在しますが、日本では現時点で薬事承認を取得していません。

取り扱い可能なクリニックは非常に限られており、希望される場合は事前に受診先にご確認ください。


🎁選択肢が増えることの意味

これまで日本でIPCLが使えなかったのは、承認がなかったからです。

「ICLしかない」という状況が、「IPCLという選択肢もある」に変わった。

それは、患者さんにとっての選択肢が広がったということです。

一方で、

「新しいから良い」でも「有名だから安心」でもなく、

その目に合ったレンズを、適切な経験を持つ術者が行う。

それが、長期的な満足につながる手術の本質だと思っています。

この記事が、どちらのレンズを選ぶにしても、

正しい理解のための一助になれば幸いです。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の治療方針については、必ず眼科専門医にご相談ください。

※ICL・IPCLの取り扱い状況・価格・適応については、受診先クリニックにお問い合わせください。(当院での導入情報は準備が整い次第お知らせします)

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